人類最強って誰?
この問いに、あなたなら誰を思い浮かべますか?
僕(29歳)はエメリヤー・エンコ・ヒョードルです。
僕より年上の方にとってはヒクソン・グレイシーなのかもしれません。
じゃあ現在(2021年)の人類最強は誰なのか?
「今の最強はよくわからない(汗)」という方も多いのではないでしょうか。
しかし、その問いに対する答えは明確に存在します。
この記事では、その「答え」を超簡単な人類最強史とともに紹介します!
読めばPRIDE以降の「人類最強」の流れがわかります!
さっそく結論から書きます。
現在の人類最強は本日開催されるUFC260のメインイベント
スティーペ・ミオシッチ VS フランシス・ガヌー2の勝者です!
「人類最強」は、総合格闘技(MMA)のヘビー級チャンピオンに特権的に冠される称号です。
それはそのまま、MMA界の最高峰であるUFCのヘビー級チャンピオンが「人類最強」であることを意味しています。
※1 「人類最強」ならUFCのヘビー級王者はボクシングのヘビー級王者よりも「強い」のか?という問いは、ここでは忘れます。競技が違うため比較ができません。
総合格闘技(とくにヘビー級)を語る上では、その頂点を「人類最強」と呼ぶことがロマンと一体化した慣習であることをご理解ください。
※2 なぜ「UFC=MMA界の最高峰」なのかは、長くなるので別の機会に記事化する予定です。
ミオシッチ VS ガヌー2の勝者がなぜ「人類最強」かを説明する上で歴史をたどった方がわかりやすいので、ここ30年弱の「最強史」の変遷を見てみましょう。
超簡単!人類最強史

ヒクソンの最強像を作り上げたのは弟のホイス・グレイシーです。
1993年、UFC第一回大会が開催されました。金的・噛みつき以外を全て許す、ほとんどルール無用のなか行われた伝説のトーナメントです。
そこに出場したホイスは、自分より大きい相手を次々とグレイシー柔術で締め上げて撃破し、優勝を果たしました。そのホイスが「兄のヒクソンは俺の10倍強い」と発言して注目を集めたのです。
翌年にはVALE TUDO JAPANという大会で圧倒的な強さを見せつけて優勝し、400戦無敗という逸話、呼吸法やヨガを取り入れた鍛錬で神通力が備わっているかのようなオーラも相まって「最強像」が形成されました。

UFCの第一回大会(1993年)はホイスの優勝でスタートし、PRIDEの第一回大会(1997年)は髙田延彦を相手にヒクソンが圧倒的な力を見せて幕を開けました。
そのPRIDEが産み落とした「最強」がヒョードルでした。
無差別級の中にあっては小柄でありながらも、異次元の瞬発力と爆発力で氷の拳をぶん回し、次々と強者や巨人たちをなぎ倒していきました。秒殺、圧勝が多かったのもヒョードルの特徴です。
PRIDEにはヒョードルに匹敵する強豪としてアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップがいましたが、いずれに対してもヒョードルは勝ちました。
2000年代のヒョードルは「最強」でした。
UFCで戦うことはありませんでしたが、2010年代にUFCで王者になるケイン・ヴェラスケスやジュニオール・ドス・サントスが憧れの選手としてヒョードルをあげていたことからも、全盛期におけるヒョードルの輝きのまばゆさがうかがえます。
ヒクソン → ヒョードル → ◯ ◯ ◯
ここからはほとんどUFCの話になって来ます。
理由は「最強」を決める舞台がPRIDEからUFCに移ったからです。
PRIDEの象徴的な存在であったノゲイラやミルコがUFCで敗れていきます。
ノゲイラは暫定王者まで上りつめますが、真の実力が問われるような強者を相手には敗北を重ねていきます。
ミルコもかつてのターミネーター的な強さを見せることはなく、強者には敗れていきます。
ヒョードルすらもStrike Forceという舞台で3連敗し、さらにヒョードルを破った選手たちがUFCに行くと敗れます。
2010年代の初頭にはPRIDEの神話が崩壊します。
この事実を受け止めきれず、スムーズにUFCファンに移行できなかった格闘技ファンは多いのではないでしょうか?自分もその一人です。
今日に至る約10年間の間に異様に新陳代謝の激しいUFCでは「最強」が次々と塗り替えられて行きます。
00年代のランディ・クートゥア、ティム・シルビア、フランク・ミアといったUFCヘビー級王者たちを割愛するのは胸が痛みますが、10年代に絞って「最強史」をたどります。
- ブロック・レスナー ・・・ プロレスの本場WWEのスーパースター。レスリングで大学時代オールアメリカンに選出された経歴を持つ。強靭なフィジカルを持つ人間が本気でMMAをやったらメチャクチャ強かった。00年代のUFCヘビー級を象徴するクートゥアやミアに勝った正真正銘の王者だが、以下で紹介するヴェラスケスやアリスターに敗れたため、真の最強王者であることは証明できなかった。
- アリスター・オーフレイム ・・・ 2009年K-1王者。別次元の筋肉を搭載したフィジカルと、高次元の打撃スキルを武器に一時期は最強と目されていた。ヒョードルに「最強を決めようじゃないか」と対戦を呼びかけていた時期もあり、Strike Forceではレスナーやヴェウドゥム(下記で紹介)を破った。しかし、UFCに移籍してヘビー級タイトルマッチを控えたタイミングで抜き打ちのドーピングテストを受けたところ、ステロイド陽性反応が出る。あの驚異的な筋肉はステロイドによるものだったのだ。この時期の彼を、ファンは「アリステー」と呼ぶ。さておき、復帰後のアリスターの身体はスケールダウンし、かつての別次元の馬力は見られなくなった。しかし、その後は技術面・経験値を駆使する戦術にシフトし、長年UFC戦線のトップ選手であり続けたが、王者になることはできなかった。2021年に引退を発表した。
- ケイン・ヴェラスケス ・・・ ノゲイラやレスナーに圧巻なKO劇で勝利を収め、UFC王者になった。正直ヴェラスケスはヒョードルの次世代における、真の最強と目されていた。しかし、キャリアの中で怪我に苦しむことが多く、万全の状態で臨めた試合数は少なかったことが悔やまれる。10年代のヘビー級頂上決戦であったジュニオール・ドス・サントス(下記で紹介)との3試合は語り草となっており、今見返してみても、この時期はヴェラスケスの時代であったことが確信できる。
- ジュニオール・ドス・サントス ・・・ ノゲイラの直弟子でありながら、傑出した打撃スキルを持っており、全盛期はMMA界最強のストライカーであった。UFCのデビュー戦でヴェウドゥム(下記で紹介)に対してまさかのKO勝ちを収め、破竹の勢いで頂上に駆け上り、そのまま上述のヴェラスケスをKOしてチャンピオンとなった。あのミルコを打撃で圧倒した試合には衝撃のあまり茫然自失。その後、ヴェラスケスとの試合を重ねて尋常でないダメージを蓄積しつつもトップ選手として活躍していた。しかし、ガヌー戦を控えたタイミングでドーピングテストに陽性反応を出し活動停止。復帰後に全盛期を取り戻すかのような強さを見せるが、ガヌーに負けて以降4連敗し、今年になってアリスターと同時期に引退を発表した。
- ファブリシオ・ヴェウドゥム ・・・ 最も記憶に残るのは、彼がヒョードル神話を終わらせたことである。後にノゲイラを腕ひしぎ十字固めを極めるほどの柔術マスターである彼は、ヒョードルに一本勝ちした。彼はまた、あのヴェラスケスにも一本勝ちをしてUFC王者になっている。最強ハンターである。生ける伝説の時代を終わらせ、強者に対してもしっかりと勝ちを収めた屈指の名選手であることは間違いない。しかし、ヒョードル、ヴェラスケスをともに全盛期と呼びにくいタイミングで下していることや、ミオシッチには敗れてしまっている点などから、最強選手として語られることは少ない。
- ダニエル・コーミエ ・・・ ライトヘビー級王者でありながら、同時にヘビー級王者にもなった。しかも難攻不落のスティーペ・ミオシッチ(下記で紹介)から王座を奪還したインパクトは大きかった。MMAのキャリアにおける彼の敗戦は、ライトヘビー級でジョン・ジョーンズ、ヘビー級でミオシッチに対してだけである。いずれもトップ中のトップ選手である。彼が名実ともに偉大なチャンピオンであることは間違いないが、最強と目されることは少ない。彼がヘビー級王者となりラバーマッチ(1勝1負で行われる第3戦)まで行われたことで、明らかに最強の挑戦者と化しているガヌーにタイトル挑戦権が回らず、ヘビー級が停滞気味になったという負の側面もある。ちなみに彼はヴェラスケスと同門(同じジム所属)で、かつてトレーニングを共にしていた。かつては「黒いヒョードル」と呼ばれていた。
- スティーペ・ミオシッチ ・・・ 現在の最強がまさに彼である。ミオシッチはUFCヘビー級のタイトルを防衛した回数が最多の4回(連続3回と王座奪還してから1回)を誇る。倒してきた選手には、ヴェウドゥム、アリスター、ドス・サントス、ガヌー、コーミエなど錚々たる面々が並ぶ。ファイトスタイル的にも穴がなく、歴代でも最も完成されたヘビー級選手と呼んでも過言ではない。最強の挑戦者であるガヌーとのリマッチに再び勝利すれば、文句なしに「人類最強」と目されるであろう。
- フランシス・ガヌー ・・・ 最強の挑戦者。圧巻の筋肉を備えたフィジカルから繰り出される殺人パンチで幾多の怪物ランカーたちを葬り去ってきた。UFC参戦から瞬く間に「裏最強」説を周りから唱えられ、元王者のアルロフスキーや、当時のトップランカーのアリスターに衝撃のKO勝ちを収めてミオシッチとのタイトルマッチに挑んだ。倒す気マンマンで試合に臨んだガヌーは、巧者ミオシッチにそのスキを突かれ、テイクダウンされ、体力を削りに削られて敗北する。続くデリック・ルイスとの怪獣対決は、互いに強すぎるパンチ力を警戒しすぎたあまり手が出ずに解説者から「史上最も退屈なヘビー級の試合」と評される内容となり、なおかつガヌーは敗れた。ここが彼の暗黒期と言える。しかし、復帰してからのガヌーはかつての強さを完全に取り戻し、ヴェラスケスやドス・サントスを始めとするトップランカーの猛者たち4名をいずれも1ラウンドKOで沈めてきた。勝利の内容も、ガヌーの発する威圧感で相手をひるませてしまったり、開始と同時にガヌーが暴風嵐のようなパンチを浴びせてKOするなど鮮烈なものばかりである。
ミオシッチ VS ガヌー2
そんな経緯で激突する両者。
ポイントはガヌーが1戦目の時より経験値も増しながら、強さを増幅させている点です。
僕にはガヌーが野獣のごとくKO勝ちするイメージしか湧きません。
逆にミオシッチ以外にガヌーを止められる存在もなかなか思い当たりません。
ガヌーが勝った場合は、かつてのヒクソンやヒョードルのような圧倒的な存在感をもって「人類最強」と目される王者になることが予想されます。
ミオシッチが2戦目も制した場合は、最も完成されたヘビー級選手として、実質上の「人類最強」としてその名声は不動のものとなります。
いかがだったでしょうか。
ミオシッチ VS ガヌー2が「人類最強」決定戦であることが、みなさんにも伝わりましたら幸いです。
この試合の勝者には、将来的にもう一人の「最強」が立ちはだかるであろうことが予想されています。
彼の名はジョン・ジョーンズです。
ジョーンズに関しては、またの機会に書こうと思います。
その際は、ぜひまたご一読を。